現場で働く薬剤師が、日々の業務を続けながら無理なく研究を始め、学会発表や小さな成果につなげるための手引きです。
「①研究フィールドを知る」「②5W1Hで方向性を決める」「③時間管理で時間を作る」を、具体的な手順と活用のコツをお伝えします。
また、この内容は2025年10月8日に行われたウェビナーの内容を基に作成しております。
アーカイブ動画はオンラインコースにて見ることができます。
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はじめに:なぜ今「現場×研究」か

薬局の現場は“第1領域(緊急かつ重要)”の連続で、研究は後回しになりがち。
でも、研究は特別な才能よりも設計と習慣で進みます。
小さく始める
5W1Hで構造化する
時間は“作る”と決める
この3点で、業務の延長線上で回る研究にできます。
コツ① 研究フィールドを知る

研究は“畑を耕す”プロセス
畑(領域)を見つける → 土壌(先行研究)を確かめる → 種(仮説)をまく → 方法で育てる → 収穫(結果)を現場に戻す
いきなり大農園は不要。1区画(小テーマ)からでOK。
自身の「研究をやってみたい」目的を明確にする
目的あるあるーその1:漠然とした興味・経験目的
- なんとなく
- ポスター発表くらいはしてみたい
- 認定単位取得のため
アドバイス:まずは真似をする
目的あるあるーその2:自己成長・価値発見
- 研究できたらかっこよさそう
- 自分のやっている仕事の価値を知りたい
アドバイス:既存研究のアレンジをする
目的あるあるーその3:現状打破・業界貢献
- 新しいルールを作りたい
- 今の薬剤師業界を何とかしたい
- 厚労省に物申したい
アドバイス:本格的に研究に取り組む
到達点を先に決める(ポスターか論文化か)
短期ゴール:学会ポスター/院内発表
→ 既存研究の追試や小さな工夫の前後比較で十分。
中長期ゴール:論文投稿
→ 新しい問いが必要。倫理審査・方法の厳密化も必須。
初心者がやりがちなのは、準備不足のまま論文投稿にチャレンジして不採択(リジェクト)になること。
目的がポスターなのに、論文レベルの要件で自己評価して落ち込む、も“あるある”です。
まずは目標に合う設計にしましょう。
フィールド把握の実務ステップ(3時間でできる最初の地図作り)
キーワード3つを書く(例:薬局/高齢者/PPI)
Google Scholarで直近5年に絞って10本ざっと読む(タイトル+抄録中心)
同じ著者・同じ雑誌が何度も出る→分野のキーパーソン・主要誌としてメモ
学会を1つ決める(例:社会薬学会/老年薬学会/医療薬学会など)
自分の現場に当てはまる“測れる指標”を3つメモ(残薬率・待ち時間・情報提供書の返信率など)
ここまでで“地図”ができます。テーマをどこから切るかが見えてきます。
倫理審査の考え方(初心者が迷うポイント)
介入あり/個人情報あり → 基本は必要
匿名アンケート/公開データの二次分析 → 不要な場合あり
他施設で審査済みの手順を忠実に追試 → 追加審査不要のことも(施設規程は要確認)
最初の1本は“追試+小改良”が現実的。無理なく経験を積みましょう。
コツ② 5W1Hで研究テーマを導く

5W1Hの骨格(質問票そのまま使えます)
要素 具体的に書くこと(初心者向け)
Who(誰に) 患者/家族/薬剤師/医師など。一番助けたい相手を1つに絞る
What(何を) 数字で測れる困りごと(例:待ち時間、残薬率、電話の往復回数、説明の理解度)
Why(なぜ) 臨床・安全・業務改善のどれに効く?理由を1行で
Where/When 店舗/在宅/処方日/繁忙時間帯など、観察できる場面
How(どうやって) 観察・アンケート・介入前後比較・既存データ分析など、今できる方法
「測れない困りごと」は、まず“測れる形”に言い換えるのがコツです。
例題:PPIを切り口に“測れる課題”へ落とす
Who:多剤併用の高齢者で長期PPI使用の患者
What(測るもの):
不要持続の割合、2) 減量・中止提案後の実施率、3) 重複投与の発生率
Where/When:定期処方時の薬歴レビュー、総合評価加算の面談時
How:
既存薬歴の後方視(3か月)
チェックリスト導入前後の比較(提案の漏れを減らせるか)
情報提供書テンプレを使った時の医師返信率の変化
これだけでも立派な“現場研究”。まずは1店舗・短期間でOKです。
工程の最適化:目的に合わせて「やらない工程」を決める
一般的な流れは、①臨床疑問→②研究疑問化→③先行調査→④計画→⑤倫理→⑥実施→⑦発表→⑧論文化→⑨普及。
初心者は目的に合わせて“削る”のがコツ。
ポスターが目的:①②は簡易版、③から入ってOK。⑤は必要かだけ確認。
論文化が目的:①②⑤の精度が最重要。最初の設計に時間をかける。
やってはいけない例(初心者のつまずきパターン)
いきなり論文投稿に挑戦 → 不採択
・テーマが大きすぎる/測定が曖昧/倫理手続き不足 など
→ 段階を踏む(ポスター→多施設化→方法の厳密化)
測れない目標を立てる
・「患者満足度を上げる」だけでは評価できない
→ “何点→何点へ”“何分→何分へ”など数字に変換
現場で実行できない方法を選ぶ
・忙しい時間帯にしか測れない/記録が残らない
→ 実施可能な場面に置き換える(後方視/チェックリスト化 など)
コツ③ 時間管理を身につけて「時間を作る」

口癖を変える:「忙しい」→「仕事が溜まっている」
「忙しい」は自分でコントロールできません。
「仕事が溜まっている」と言い換えると、次にやる行動(捨てる・任せる・順番を変える)が見えます。
1日の棚卸し→重要×緊急の4象限
第1(緊急×重要):外来対応/在宅訪問/期限付き発注/クレーム対応
第2(非緊急×重要):棚卸し/教育/関係構築/健康維持/文献整理/研究の下準備
第3(緊急×非重要):結論の出ない相談・横やり
第4(非緊急×非重要):惰性的SNS・目的のない視聴
→ 削るのは第3・第4。ここから15〜30分/日を研究へ振替。
情熱×時間×スキルの掛け算(不足は他で補う)
スキル不足 → 時間を使って学ぶ・テンプレ化
時間不足 → スキル(標準化・自動化・ショートカット)で短縮
どちらも不足 → 情熱(動機の再確認)で継続力を確保
最小運用セット(紙/デジタル)
紙:アクションプランナー/自分手帳(視認性・即アクセス)
デジタル:Googleカレンダー+タスク/デジタル版フランクリン(共有・可搬性)
毎週やること
研究ブロックを先に予定へ(15〜30分×週3)
5W1Hメモを1件追記(スマホ定型文で)
資料置き場を固定(後日の図表作成が速い)
実践ワーク:今日からできる2ステップ
昨日の行動を3分で棚卸し→4象限に分類→第3・第4の合計=研究時間
5W1Hテンプレで“1テーマ”起案(2週間以内に着手できるサイズに)
迷ったら「1日15分×6回=90分」を、最初の実行単位に。
情報探索とAI活用のコツ(書き方例つき)
信頼性の目安:学会年会の継続/J-STAGE掲載/編集委員・査読体制の可視性/日本学術会議協力学術研究団体か
AIへの投げ方(そのまま使える例)
「薬局薬剤師として、PPI適正使用に関する日本国内・直近5年の研究動向を、
主要論点/代表論文名/現場で試せる行動案に分けて箇条書きでまとめてください。
参考URLがあれば付けてください。」
AIは下調べの時短に。要点を掴んだら原典に当たるのが基本。
Q&A(初心者から多い質問)
Q:倫理審査は毎回必要?
A: 介入や個人情報を扱うなら基本必要。匿名アンケート/公開データのみなら不要のことも。施設規程を確認。
Q:いきなり論文投稿はダメ?
A: おすすめしません。準備不足のまま投稿→不採択(リジェクト)の確率が高いです。
まずはポスターや院内発表で小さく実践→多施設化や方法の厳密化→投稿の順で。
Q:データ整理が苦手
A: まずはチェックリストと固定フォーマット(Excelの列を固定:ID/日付/指標/備考)。
図表は先に型を作って空欄を埋める方式にすると時短。
まとめ:研究を“日常に組み込む”
フィールドを知る:3時間で“地図”を作る
5W1Hで構造化:測れる困りごとへ言い換える
時間を作る:第3・第4領域を15〜30分だけ削る
段階を踏む:ポスター→(多施設・改良)→論文投稿
研究は現場改善の延長。小さく始めて回しながら育てるのが最短ルートです。
付録:次の一歩チェックリスト
Scholarで直近5年・10本の抄録を読む
主要著者・主要誌・学会を各3つメモ
5W1Hテンプレで1テーマ起案(測る指標を3つ)
15〜30分×週3の研究ブロックを予定へ
施設の倫理手順を確認(要否の目安をメモ)
お知らせ(コミュニティ&サポート)
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